スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs/1955-2011)私と同年だが既に56歳で亡くなっている。誰もが知る彼は、型破りの才能と反骨と情熱の人で、革新的発想でAppleを創業、MacintoshやiPod、iPhoneが現代に残した功績はあまりに大きい。
48歳で「すい臓癌」発症、56歳まで死と向き合い「死は生命最高の発明」の言葉を残した。2005年闘病中に母校スタンフォード大学で講演。死があるから生物は進化する。君たちもいずれ消えていくからこそ、本意でない人生を生きて時間を無駄にしてほしくない。そして最後に「Stay Hungry. Stay Foolish」と学生に願った。
「ずっと飢えていろ、ずっとバカでいろ」とは、現状に満足して小賢くなるより、絶えず貪欲に何かを求め挑戦し続けろという意味だろう。最近の「冒険より安定指向」への警鐘だ。
しかし私の解説など、本人の「最後の言葉」には敵わない。先ずは全文を一読願いたい。
■スティーブ・ジョブズ『最後の言葉』
他の人の目には、私の人生は成功の典型的な縮図に見えるだろう。しかし仕事を除くと喜びの少ない人生だった。人生の終わりには、富など、私が積み上げた人生の単なる事実でしかない。病気で寝ていると人生が走馬灯のように思い出される。
私がずっとプライドを持っていたこと、認められることや富は、迫る死を目の前にして色褪せていき、何も意味をなさなくなっている。
この暗闇の中で生命維持装置のグリーンライトの点滅を見つめ、機械的な音が耳に聞こえてくる。神の息を感じる。死がだんだんと近づいている。
今やっと理解したことがある。人生において十分にやっていける富を築き上げた後は、富とは関係ない他の事を追い求めた方が良い。もっと大切な何か他のこと。それは人間関係や芸術やまたは若い頃からの夢かもしれない。終わりを知らない富の追求は人生を歪ませてしまう。私のようにね。
神は誰もの心の中に、富によってもたらされた幻想でなく、愛を感じさせるための「感覚」というものを与えてくださった。
私が勝ち得た富は一緒に持っていけるものではない。私が持っていけるものは愛情に溢れた思い出だけだ。これこそが本当の豊かさであり、貴方とずっと一緒にいてくれるもの、貴方に力を与えてくれるもの、貴方の道を照らしてくれるものだ。
愛とは何千マイルも越えて旅をする。人生に限界はない。行きたいところに行きなさい。望むまで高峰を登りなさい。全ては貴方の心の中にある、貴方の手の中にあるのだから。
世の中で一番犠牲を払う「ベッド賭け」が何か知っているかい?シックベッド(病床)だよ。貴方の為に誰かドライバーを雇う事もできる。お金を作ってもらう事も出来る。だが貴方の代わりに病気になってくれる人を見つけることは出来ない。
物質的な物は無くなっても、また見つけられる。しかし一つだけ無くなってしまっては、再度見つけられないものがある、人生だよ。命だよ。
手術室に入る時、病人はまだ読み終えていない本が1冊あったと気づくんだ。「健康な生活を送る本」貴方の人生がどんなステージにあっても、誰もが、いつか人生の幕を閉じる日がやってくる。
貴方の家族のために愛情を大切にしてください。貴方のパートナーのため、貴方の友人のために。そして、自分を丁寧に扱ってあげてください。他の人を大切にしてください。
実は最近、ひと月足らずで家内の両親が逝去する悲劇に見舞われ、彼の言葉が染みる。あの吉田兼好は「死を嘆かず生を喜べ」と言っている。
ぜひ、皆さんも熟読くだされば幸いです。