“ストレスは人生の伴侶”、ストレスのない人生はないと言われる一方、過剰なストレスは深刻である。家庭や職場内では勿論のこと、春、進学や就職などの環境変化に伴い、想像以上のストレスを抱えてしまうことがある。
実は2月末、頭まで筋肉の息子が突然、「円形脱毛症」になった。柔道の大事な試合でのプレッシャー・ストレスはコントロールするくせに、無理やり私立中学を受験させたことが相当なストレスだったらしい。結果は、案の定 玉砕! 憧れの先輩のいる公立中学に進むことを決めると、産毛が生えてきた。
私は40代の支社長時代に「ストレス性の逆流性食道炎」と診断され、「数字に追われる仕事を止めれば治ります」と言われて往生したことがある。
そして新入社員にありがちなのが、環境変化に戸惑い、対応できないのか、何となく違和感・疎外感を感じる、どうも仕事に向いていないなどと容易に口にする。
ストレスには、円滑でない人間関係や、思うようにならないといった「悩むストレス」と、仕事での大事なプレゼンテーションや、スポーツの試合の直前など、それを克服してエネルギーに変えて「事に臨むためのストレス」があると思う。よく言われるが、体に不利益な「不快ストレス」と体に有益な「快ストレス」とに分けることもできるようだ。
息子の円形脱毛症は紛れもなく、不快ストレスによるもの。何とも分かりやすい。
新社会人には、あれこれ口にする前に、自ら感じるストレスに真正面から向き合って、その原因を究明し、どう乗り越えればよいのか、大いに悩んでほしい。
以前にも書いたが、ストレスとは自分の思いどおりにならない場合などに発生しやすく、ストレス反応と呼ばれる、普段、保たれている恒常性の生体バランスが崩れた状態に陥ることとなる。体の変調なので、副腎皮質からのホルモンの分泌バランスに異常な現象が起きるという。
生体バランスを乱す要因は、物理的・科学的・生物学・心理学・社会学的刺激など、自然界や日常生活全てにあるのでそのコントロールは難しいが、ストレスを自己内で軽減化する努力は必要である。
それには心理的・身体的・行動的・環境的手法など色々あり、書物でも紹介されているが、要は自分のメンタルタフネス(心の強さ)を向上させることである。
最近、若い女性に薄毛や抜け毛に悩んでいる方が多くなっている。人はどんな形のストレスであろうと、ストレスがかかるとそれに打ち勝つために、体内で男性ホルモンの分泌量が増えるとされ、女性ホルモンとのバランスが崩れて毛髪サイクルが不規則になり、「ケラチン」という髪の生成物質の不活性化につながるといわれている。男性ホルモンが髪に影響を及ぼすというわけだ。
男性ホルモンはマイナス面ばかりではなく、別名「ケセラセラホルモン」とも言われ、「なるようになる」的におおらかな気持ちを向上させる作用もある。
体の奥底から、自分自身に「悩むな、打ち勝て、元気な気持ちを持てよ~」とエールを送っているのである。
急激なストレスで、円形脱毛症になったり、髪の毛が一晩で白髪になったり……、嬉しくない現象が起きた時は、「ケ セラ セラ」「なるようになるさ」と乗り切ってほしい。
ストレス疲れは弱った気持ちを癒すことから
とはいえ、ストレスの軽減化と心の強さの向上は、そう簡単なことではない。まずはストレスで疲れて、弱った気持ちを癒すことから始めることである。
癒しの手法で、着目されているのが「ゆらぎ」の研究である。
少々堅苦しい説明になるが、ご存じの方も多いと思う「1/f ゆらぎ」(エフ分の1ゆらぎ)である。物理学的には、広がりや強度を持つ、エネルギー・密度・電圧量の、空間、時間の平均値からの変動を指すらしい。
ピンクノイズとも呼ばれ、自然現象に多く見られる。人の心拍の間隔、ろうそくの炎の揺れ方、電車の揺れ、小川のせせらぎ、木漏れ日、海の波、蛍の光り方などに共通すると言われ、この自然現象と人の生理が生み出すゆらぎのリズムが、人に快適感やヒーリング効果をもたらすそうだ。
1/f ゆらぎからなるバロック音楽はヒーリング・ミュージックの最たるものだ。癒されると感じる歌手や俳優・ナレーターの声、見とれてしまう絵画の色の濃淡などにも1/f ゆらぎがあるとされている。
癒されたいと思った時には、このゆらぎを活用して気分を変えてリフレッシュすることをお勧めする。
特に「好きな音楽を聴く」ことは良い。心が疲れたなと感じたら、休日、「癒しの空間」を演出してみよう。熱いコーヒーでも飲みながら、好きな音楽を聴いて、海辺にいる姿を思い浮かべてみる。そして、自分の血液の流れと呼吸を感じてほしい。好きな人と同じ呼吸に合わせてみると更に素晴らしい。自然界と、好きな相手ともシンクロしたら、穏やかな気分になるはずである。きっと、元気が出てくるはずだ。
その時に「自分は強い、タフだ」と言い聞かせて、夜間ならそのまま眠りに着きたい。勿論、横になっているだけでも構わない。心身ともに疲れが取れるから。眠りに着いたら、翌朝、朝日を浴びること。この時に我々の体内時計はリセットされる。
1日24時間だが、我々の体内時計は微妙に違っているので、朝日を感じることで、自律神経の働きを正常にリセットするようになっているのだ。
私は今日も笑っている。可笑しくなくても「作り笑い」を浮かべて、笑い声も出す。
笑うことで、自分に強くなる細胞、癌とも闘う免疫細胞のナチュラルキラー細胞が活発になるらしい。悲しい顔はナチュラルキラー細胞を減少させてしまう。この差は計り知れない。笑い声を出せば言うことなしだ。
柄でもないと笑われそうだが、私は毎朝、起きるとすぐ、ノラ・ジョーンズの「Don’t Know Why」を聞きながら、洗面所の鏡の前でまず笑顔の練習。無理して口角を上げて、「にっこり、3秒間」静止する。これで、「今日も元気!」と信じている。
元気だから笑うんじゃない。笑うから元気で健康になれるのである。
田辺 志保