2020年8月22日土曜日

機を見るに敏!

「機を見るに敏」はビジネスには必須のスキル。特に新規開発には欠かせない。市場動向やマッチングのチャンスに目端が利くことで、ここと思えば一気に行動に移る。躊躇すると機を逸する。

最近「機を見るに敏」案件に出会いスタッフ総出で奮闘中。昨年は守りに終始したが、新たな模索は気持ちが高揚する。面白ネタは時期が集中するので、機敏な対応に追われる。


うまい話にゃ裏がある?



私の拙い経験だが、色々動いてビジネスに成就する確率は高くない。過去連続成就の奇跡もあったが、通常はヨタ話も含め100件中2~3件程度が可能性あり。それに話が大きすぎると成就は難しい。国家間の案件、産官学や利権絡みの話は尚更だ。

以前、ある発展途上国の方から、漁獲の魚が自国でうまく流通しない。漁師が海上で捕獲した魚を、日本漁船に高値で直接取引してしまい、港に卸さない。そこで何とか「漁業組合」を作りたいが手を貸してくれと相談された。なぜ私に?と面食らった出来事だった。

私への要望はディレクション。本来の業務もあり、何やら横やりも入りそうでお断りした。中東の産油国の場合は、おにぎりと寿司の握りマシーンを繋いだが、工場建設、レシピ開発と話は広がる一方。不得手は介入せず繋ぐだけにする。

この手の話は、総合力の大手商社に集まるが、出所次第では私にまで飛んでくる。中東の話もスポンサーは皇太子でも、遣わされた使者は、先ず親しい日本の知り合いを頼る。問題は、使者に決定権もなく、事業の理解不足から丸投げするので、遅々として進まない場合が多いことだ。


ことを成すには、一点突破!



物事は、大きく一気に成功させようと欲張らず、小さくても確度の高い事に絞り「一点突破」で成功させることだ。成功で得た信頼関係で、点から線、面へと広げる。大物狙いの投網より、小魚でも一本釣りで捕獲しないと意味がない。

新たな商売を本業にプラスで、0か1の世界に踏み込むのは容易でない。それには「何を考えるか」より「誰と話すか」が最も重要だ。ネットワークが成功の鍵。異業種や事業に精通した方との情報交換から、新規ネタを拾う。そして決め手は、ご縁を喜び合える関係性の有無だ。

その為には、深く広いネットワークを築くべきだ。出会いを大切に「生涯の友」として付き合う。友の頼みなら損得なしで汗を流せる。手に余れば迷わず他の方に繋ぎ、お任せする。不思議と繋いだ方が新たなネットワークに加わる。


私の嫌いな言葉は「やったことがない」「ダメだと思う」「無理」…困難からの発想の答は「諦め、止める」しかない。逆に好きな言葉は、可能性からの発想の言葉。

成功者の歴史をみても「絶対に諦めない」が共通項。当たり前だが、諦めないから失敗しない。失敗しないから成功の可能性が残るのだ。

ネットワークは大切だ!













2020年8月8日土曜日

教えを貫けるか。

思えば会社人生42年、実に16回の転勤と職歴を重ねた。カネボウ化粧品静岡販売の代表取締役就任で正社員籍を外され、嘱託社員として退職金を精算された。入社19年の退職金ではと落胆したが、逆に42歳には破格の年俸契約に驚いた。

当時は、選抜者1か月の合宿教育を経て正課長、次に全国事業場長と本社部長の嘱託化がカネボウ流の幹部育成。経営者の視座を培うには最適だ。

まず、月次支払いの最初の承認が己の費用。「〇月度経営指導料」と書かれ、私の報酬と係る経費も記載されており、この書類に自分が自分に支払いの印鑑を押すのである。

毎月、経営指導料に値する行動と成果なのかを自問自答させるのだ。これはきつい。新米の私は、業績の未達月度の押印を拒否したことがある。

数日後、財務役員から電話「タナベ、何かっこつけてんの、支払いが出来ずに困ってんだ。嘱託は年度更新だから通年での評価。月度で一喜一憂するな」と一喝。中長期での成長を仕込んで、足元をどうするかの視座を持ったのもこの頃だ。

こうして、化粧品は昼夜を問わずの達成軍団として、驚異的な数字を挙げていく。しかし、これも労働環境の変化と花王へのグループ化に伴い嘱託社員制度は廃止となる。



次第に鐘紡は「正しく行って、何人も恐れず」の教えを忘れていく。上場を維持するため債務超過を隠し粉飾決算に手を染め、2001年の発覚から崩壊の道を突き進むことになる。

繊維部門を筆頭に業績悪化の流れは、縦割りの弊害と合流し怒涛の濁流となり、鐘紡は漂流し飲み込まれた。徹底教育された「論語の規範」は一体何だったのか。悔しくて涙が出る。


速やかにならんを欲するなかれ、小利を見るなかれ。



鐘紡幹部の致命教室・論語の教え。事を急げば達せず、小さな利益にとらわれると大事成らず。目先に惑わず先を見据えた視点を持て。この教えを、我々は単に知識だけに留めてしまい、結果的に絵空事となったのは、皮肉な話である。

迷走からの学びは、経営者が「将来のビジョン」を語り続ける大切さ。若手の帰属意識の希薄を嘆くより、させられない経営者が課題なのだ。

社員が時の権威に屈せず、正道を貫ける風土を作り、その風土を「社風」にする評価制度にまで進化させられるか。せめて老兵は、これを伝え続けなければならない。

コロナ禍の「まさかの坂」はまだまだ続く。故に多くの教えを胸に、目先の小利に惑わされない将来像を、繰り返し語り続けたいものである。

「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」…深くて重いビスマルクの教えである。