2016年11月16日水曜日

本末転倒

弊社でも、今やっている業務の「目的は何か」を確認する場面がある。今一度、目的を明確にし、その手段を講じたときに、いつの間にか手段が目的化してしまい、本来の成果が疎かになる事を危惧する。

以前在籍した販売会社の時代に「新規取引先の獲得作戦」を掲げ新規取引店の開拓運動をやった。空白エリアから化粧品を取扱いできそうな小売店をリストアップしたり、競合メーカー取扱店の有力先一覧、商業店舗出店計画を調査して、新規開拓リストを作成した。

マーケのスタッフは、アタックリストが完成したら、仕事が終わったような顔をしている。「手段」の役割分担は、手段を目的化してしまう。総じて本末転倒現象は多い。
「目的」は新規の獲得。大元の目的は売上・シェア拡大である。当然リストから「行動計画」を営業部に繋げ、営業部は訪問先での効果的な営業話法、興味を引く情報等の準備。そして、訪問活動開始、プロセス管理。これ全て手段である。相当なコストでもある。

準備万端、実行の結果は、プロセス管理の徹底もあり計画以上の成果が得られた。しかし、獲得第一号が、普段の営業に新規獲得をデイリーにしていた営業マンが、リスト以外の職種の小売店との取引契約書を獲得。用意した手段は役に立たずショックだった。

完璧な手段と実行より先に、新規を取る「熱意」と、常識に問らわれない「発想」と果敢な「行動力」こそが最重要だと、思い知らされた。



総じて、我々は本末転倒に陥りやすい。


面白い歌がある。少し前に流行った子ども向けの歌だが、妙に気に入っている。

「ホンマツ テントウ虫」

買ってもらった 新しいスパイク
こんなに ピカピカだと 汚したくなくなる
んで、泥にまみれたボールよけて走る
試合に負けたけど 汚れなくてすんだ

それじゃあ それじゃあ 本末転倒
ボールの模様 テントウ虫
それじゃ それじゃ 本末転倒
ありゃ りゃ ホンマツテントウ虫

こんな調子で、鍵を失くした場所が暗いので、離れた街灯の下で探す、とか寝坊できない日に目覚まし時計が鳴るか心配で、朝まで起きて確認したら安心して眠ってしまった。
と続くのだが、笑える歌詞だが笑えない話である。

来春高校生になる柔道息子は、この歌を知っている。将来を大きな視野で捉えると、高校選びも変わるはず。確かに「柔道選手での夢」を追いかける完全燃焼の姿は素晴らしい。
しかし先をみて「文武両道」と人間形成の大切さを気づけば、夢の追いかけ方も変わる。

出稽古で、彼は「やらされる」練習より、自発的に考えて「やる」練習の違いを痛感したらしい。先生不在での手抜きが嫌で、自発的に練習をする高校を目指したいという。

実は、学問も仕事も「自発的」と「当事者意識」は、目的を腹に落とし、明確な手段を自らに課し、やり続けるので、成果を出す絶対条件だと思う。
何事も「やらされる」と「やる」とは、大いに異なる。今、やっていることが目的達成の手段と認識すれば、本気に手段に打ち込める。そして本来、手段は当事者が決めるべきと思っている。

「1 : 1.6 : 1.6²」 

やれ!と言われてやるときの成果を「1」とすると、何故やるのかを理解すると「1.6」で、どうやるかを自分で考え実行すると「1.6の二乗、2.56」の成果をだすそうだ。

この法則、本社に転勤した日に、前任者の方の机上にも同じメモが残されていた。
尊敬する上司からの教えを頂いた、生涯忘れられない出来事である。