2025年12月6日土曜日

「抹茶」の功罪。

お世話になる築地の丸山海苔店様から、未知の世界を学ばせて頂いている。実は今、海苔に続きお茶の価格が高騰し業界を騒がせているのだ。

お茶の生産が激減し高値で取引され、市場価格は2~3割以上の上昇で、お茶好きには事件である。

寿司業界は「米、魚、海苔」が軒並み高値の大打撃だ。そこに無償で提供するお茶とワサビの値上げが経費を直撃する。まさに死活問題なのだ。


今回のお茶の高騰は、海苔のような赤潮や海水温などの環境変化の不作でなく、生産者の減少でもない。ならば何故、茶葉が少なくなったのか。

この一番の理由は「抹茶」が未曽有の大ブームだからだ。ご存知のようにインバウンド含め抹茶が世界的な人気で、宇治だけでは追いつかず、全国のお茶の生産者が抹茶づくりにシフトしているからだ。

実は抹茶も普通の茶葉であり、収穫前に黒い布を被せ日光を遮り渋みを抑え旨みを引き出し甜茶にして抹茶に仕上げる。手間だが作れば高値で売れる。

生産者は茶畑の2~3割だった抹茶区画を大幅に拡大したからお茶の収穫減少は当然で、一番摘み・新茶から次に摘む二、三番茶も希少になる訳だ。。

三番茶あたりのペットポトルも値上げ必定だが、それより心配するのは、紅茶やウーロン茶に転換され日本のお茶文化が衰退することだ。

最近、寿司屋、蕎麦屋、居酒屋もお茶を有料化する処が出始めた。高級茶を一工夫して値段をつけるのだ。お茶の付加価値訴求である。

因みに、抹茶高騰はお茶の比でなく約2倍の値上がりだ。抹茶入りスイーツの爆売れで、粗悪品も出回り本来の価値と仕組みを変えてしまうから怖い。


手放せないブランド。


抹茶ブームが業界に与えた功罪は大きい。昔から抹茶と茶道を嗜む人や緑茶やほうじ茶を楽しむ人々が適正に継続愛用してほしいものだ。

しかし、今年の食品値上げは2万品に及ぶから、お茶も海苔も一部の現象に過ぎない。この値上げの本質は、ブランド力と価格の勝負が始まることだ。価格に見合うか。安くても買わない。高くても買うという当たり前の判断が市場を決める。

我々庶民がすべきは、無駄の排除と必要な事やモノを徹底的に吟味することだ。収入が増えないなら、価値あるモノを絞り込むしかない。

我々は価値あるモノに出費を惜しまない。カップ麺を啜り高額ブランドを求めるOL、最高品を孫に贈る年金受給者、健康グッズ、推し活のライブ通いなどの「部分的金持ち」が、その市場を牽引する。


7割りのミシェラン寿司店が丸山海苔店を使うのは、やはり本物を求め続けるブランド力と、ご贔屓さんとのセッションが成せる技なのだ。