海苔の入札に奔走する「丸山海苔店」社長から、不作で悩む海苔業界の話を聞いて驚いた。
因みに丸山海苔店さんは創業安政元年170年の老舗で、お茶の専門店「寿月堂」と合わせ、築地、豊洲、歌舞伎座店など関東で店舗展開される企業で、そのブランド力は国内に留まらずフランスのパリ店は現地でも有名な名店である。
さて海苔の話だが、実はこの3年、赤潮と温暖化による海苔の不作が深刻なのだ。海苔の価格は3年前の約3倍であり、今年初の入札も前年130%以上の価格で取引されていると聞く。
丸山さんは入札での上質な海苔以上に、廉価な海苔の質、量の確保を案ずる。しかし海苔の全てがこんな高騰では再値上げは必至である。
これは小売りから、ふりかけ、煎餅と、あらゆる業種に昨年以上に影響する。加えて「米」の高騰は寿司とおにぎり業界の死活問題で、スーパーは総菜の再考だ。このまま海苔の食習慣まで変化したら業界は大変なことだ。
既におにぎり大手のコンビニの中には、海苔の縮小や韓国産を使い始めた。今、韓国、中国は自国の海苔を「日本仕様」に生産を替え販売攻勢を仕掛けている。日本の海苔のつもりで買ったら、実は韓国産なんて事もあり得る話だ。
海苔は種付け海苔網を育み、冬期から収穫を始め、次に冷凍網で何回か収穫する。実は最初の1番摘みが最も美味いと言われ、年初の入札からの高騰は、次の収穫がプランクトン量や海水温から不作の予想が反映されてのことらしい。
海苔生産は有明など九州産が大半で、次の兵庫、宮城、愛知も健闘するが高騰は止められない。更に先日は九州に寒波襲来があり、もはや「海苔は有明」など言ってられないのだ。
残り数回の入札も、都度、質も量も価格も変わる。業者は先様の等級の納品を見込み、どこで、どれだけ、幾らの札値で押さえられるか、それをどう商いするかヒリヒリする思いだ。不謹慎だが、まるで賭場を巡る博打うちのようで、この入札行脚は私まで痺れてしまう。
日本の食生活が変わる。
実は海苔以上に漁獲量が深刻だ。海洋環境、乱獲、養殖遅れの日本の漁獲量は30年前の三分の一に激減。何とこの10年の減少は凄まじく、北海道のサンマは4.7万㌧→1万㌧、富山の寒ブリは4.7万㌧→1.1万㌧、岩手の鮭は壊滅的だ。
いつまでも産地とブランドに拘わると、そのうち当たり前の食材すら食卓から姿を消してしまう。一方、TV局は、評判の食事処や旬の食材特集など安易なPR番組ばかりを流す。先ずは、こんなPR番組に振り回されないことだ。
食材の入手困難は、我々に食生活の見直しを迫る。米の高騰は味噌の元「米麹」を直撃し「白米と味噌汁に海苔と焼魚」の和朝食はもはや贅沢品。かといって洋食の「パンとハムエッグと珈琲」も小麦と珈琲豆の値上がりが止まらない。
こんな状況で我々が今やるべきは、①食材の無駄をなくす習慣化(フードロス)②買い物上手になる事(産地より流通量)③違う食材を利用する事(調理の工夫)の再徹底である。
食品ロス470万㌧の贅沢日本も避けては通れない。と綴る私自身が、大間の鮪や北陸のブリ、広島の牡蛎に魅せられるのはどうしたもんか。
ここは、次世代の若者の未来と、己のダイエットの為に「食」の価値観を変えるしかない。
但し、お気に入りの丸山海苔店の「芽茶」と「佐賀のはしり」は別格だ。これはダイエットとは無縁と勝手に解釈する我儘翁である。💦
■丸山海苔店
https://www.maruyamanori.com/