お世話になる築地の丸山海苔店様から、未知の世界を学ばせて頂いている。実は今、海苔に続きお茶の価格の高騰が業界を騒がせている。
お茶の生産が激減し高値取引で市場価格は2~3割以上となり、お茶好きには大事件である。
寿司業界は「米、魚、海苔」が高値の大打撃の中、通常は無償提供するお茶とワサビの値上げが必要経費を直撃する。まさに死活問題なのだ。
今回のお茶の高騰は、海苔のような赤潮や海水温などの環境変化の不作でなく、生産者の減少でもない。ならば何故、茶葉が少なくなったのか。
この一番の理由は「抹茶」の未曽有の大ブームだ。ご存知のようにインバウンド含め抹茶が世界的な人気で、宇治だけでは追いつかず、全国のお茶の生産者が抹茶づくりにシフトしているからだ。
実は抹茶も普通の茶葉で、収穫前に黒い布を被せ日光を遮り、渋みを抑え旨みを引き出し甜茶にして抹茶に仕上げる。手間だが作れば高値で売れる。
生産者は茶畑の2~3割だった抹茶区画を大幅に拡大、お茶の区画と収穫の減少は必然で、一番摘み・新茶から次に摘む二、三番茶も希少になる訳だ。
ペットポトルも値上げ必定で、やがて消費者離れが進み、日本のお茶文化の衰退を案ずる。
因みに、抹茶価格は凄まじく約200%の値上がりだ。抹茶入りスイーツの爆売れで粗悪品まで出回り、本来の価値と仕組みを変えてしまうから怖い。
手放せないブランド。
抹茶ブームが業界に与えた功罪は大きい。昔から抹茶と茶道を嗜む人や緑茶やほうじ茶を愛用する人々が適正に楽しめる環境になって欲しいものだ。
しかし、今年の食品値上げは2万品強に及ぶから、お茶も海苔も一部の現象に過ぎない。この値上げの本質は、ブランド力と価格の勝負が始まることだ。価格に見合うか。安いから買うか、高くても買うという当たり前の判断が市場を決める。
我々庶民がすべきは、無駄の排除と必要な事やモノを徹底的に吟味することだ。収入が増えないなら、価値あるモノに絞り込むしかない。
我々は価値あるモノに出費を惜しまない。カップ麺を啜り高額ブランドを求めるOL、孫には最高品を贈る年金受給者、健康関連、私の逸品、推し活など「部分的金持ち」が、その市場を牽引する。
ミシェラン寿司店の何と7割が丸山海苔店を使うのは、常に本物を求め続けるブランドとご贔屓さんとのセッションが成せる技なのだ。
