2025年4月30日水曜日

まだ見ぬリスク?

 弊社にも新入社員が入ってきた。この時期は慣れないスーツの新人が街を闊歩する。将来は会社を背負うぐらいの勢いで入社して欲しいが、どうもそうではなさそうだ。

昨年の新卒は冒険しない「さとり世代」と言われたが、今年卒の就職意識調査は志望の1位が安定企業49.9%、次に給料が良い23.6%で過去最多。逆に敬遠するのはノルマのある会社38.9%、転勤が多い会社30.3%と、これも過去最多らしい。

ノルマも転勤もなく安定した給料の良い会社。そんな所なら私も入りたい。どこかで何かを妥協し、それを乗り越えてこその仕事の筈だ。

サイトを纏めると『まだ見ぬリスクを避け、体力気力を極力減らし多くのリターン(給料)を得たい』それには自らで機会を取るより機会を貰う受け身が安全だと。そもそも出世は面倒だし安全な選択肢が望めない会社なら簡単に諦める。

因みに今年は「モームリ」など退職代行が早く、入社数日での退職希望がザラらしい。彼らは「まだ見ぬリスク」を避け転職を繰り返すのか。

「ふざけるな」と思わず唸った私だが、何故?と彼らの背景を今一度考え直してみた。

確かにコロナ禍の学生は、変化が激しく不確かで正解が分からずに卒業し「貰い手意識」が強い。加えて価値観の多様化が進み、SNSやネットでキャリアの比較や選択肢が無数に提示されすぎて、選択のリスクを恐れているのだ。

直近の新卒が特殊な環境で育ったツケは大きい。採用した企業側も彼らを将来の要にする為、社員教育や組織人事を見直す必要に迫られる。


昭和オヤジは時代錯誤。


彼らを「軟弱で舐めてる」と批判するだけなら、昔を自慢する昭和オヤジだ。もはや「俺の若い頃」は通用しない。相手は「昔話など知るか、結局自慢か」と間違いなく思っている。

ならばどうするか。それは懇切丁寧に、自ら行動するメリットと方法を伝え、自律したキャリアの描き方を教えるしかない。「経験から学ぶ喜び」を彼らに与えるのだ。これは我慢と時間を要するから互いに簡単に諦めてはダメだ。


一つ明確なのは、若手も年輩も人間関係で感じる幸せは同じであること。欲求5段階の生理的欲求、安全、社会的欲求を経て社会人になると「承認欲求」が最も重要なカギになる。

人間関係の幸せは・褒められる・愛される・必要とされる・役に立っているの欲求で、これが満たされた人は、やる気や成果が格段に上がる。つまり上司は部下の承認欲求をどう満たすかで、これは仕事以外の関係性でも同じだ。

勿論、己にも承認欲求はあるが、職階が上がるほど承認する側に傾注するのだ。誰でも「貴方が頼り」と言われたら意気に感ずるのだ。

先輩諸氏は、仕事に夢も冒険心も持てない彼らを不憫と思い、夢と希望を与える為、彼らの体験一つ一つに関心を持ち認めてあげることだ。


さて、入社2年目の息子は「明日のエース」と煽てられ、やる気満々で奮闘中。ただ金欠病と多忙は相変わらずで、彼は承認欲求より食欲と睡眠欲とは、どうしたもんか。💦

「腹が減っては戦は出来ぬ」、もはや私が出来るのは食品などの物資の後方支援だけである。




2025年4月13日日曜日

300人と30人の宝。

いつも「出会いは人生の宝」と言っているが、いったい生涯に出合う人は何人だろうか。


一般的に人生で何らかの接点を持つのは3万人。学校や仕事で近い関係になる人が3千人。親しく会話ができる300人。友達と呼べるのが30人で、本当の親友は3人ほどと言われる。

あくまで通説だから個人差はある。特に生涯接点3万人は曖昧だが「人生3万日/82年」と言われるから1日1人と出会う勘定になる。SNSで面識のない人を除けば妥当かもしれない。

因みに、有名人で3万人以上の接点と3千人以上の関係をお持ちの人でも、親しく会話できる300人と心許す30人に大きな差はないようだ。


300人と30人は人生の宝。


重松清の短編集「その日の前に」は、愛する人の死別と向き合う人々が再生する話だが、やはり心残りを払拭したい大切な人は厳選されるのだ。

亡き父の話だが、父は我々の反対を押し切って癌の延命治療を停止、会いたい人の訪問行脚を強行した。7年前に母を失い自分の最後には夫婦で世話になった方を訪問と決めていたようで、身体が動く2か月に30人のリストから面談会食を実行。

結果的には体調悪化で、その半数しか会えなかったが、父は充実の時間に大満足していた

やはり歳と共に疎遠と新規が入れ替わり、増減しても、最後に会えるのは30人程だろう。父を見て最後は大切な人を巡るのも悪くないと思った。

そして己の死を看取るのは、身内と友人など10名程か。これが葬式だと遺族の知人や仕事関係の「渡世の義理」が働くから列席者は増えるが、皆が本当に悼んでいるかは別の話だ。


しかし人生の終焉話は暗くなるので、未来に向けた新しい命の話に転じるが、2024年の出生数が72万人。19年が90万人で22年で80万人を割り、僅か2年後は72万人だ。この末恐ろしい少子化は国の想定より15年も早いらしい。

これは葬式どころでない。その原因は「未結婚」の増加と出産しない「少母化」だというが、このままでは日本の存亡に関わる危機である。

今、政治家が票集めの103万の壁やガソリン代補填などの刹那的対策を語るより、抜本的な子どもの環境対策だ。2026年予定の出産無償化の前倒しと、大学までの授業料と医療費の全額免除など、大胆に取り組まないと少母化は止まらない。


当たり前だが、人は「一人で生まれ一人で死んでいく」。そして出産は笑顔で迎えられ死別は涙で見送るもの。これが悲しみの出産と喜びの死別では最悪だ。そうならぬよう嫌な奴を好きになるかダメなら排除してでも、親しく話す300人と信頼の30名と幸せな時間を過ごしたいものである。

一度の人生「全ての出会いは人生の宝」と育んできた人々が、自分にとって最高の300名と30名の仲間が「己の最強の応援団」になってくれる。

同時に自分の仲間30名に対して己が最強の「応援団長」になることも忘れてはいけないぞ。