柔道息子が来春で大学4年になる。あっという間に大学柔道もあと1年余りだ。いよいよ社会人としての将来を模索する時期が来た。
実は3ヶ月前、彼の腰に激痛が走りヘルニアと診断された。今までの柔道腰痛に加え、240㌔のデッドリフトが引き金になったようだ。今は相手の技を耐えようと踏ん張るとかなり痛むらしく、無念だが以前のような動きは難しくなった。
椎間板ヘルニアは腰を酷使する柔道家にも多く、手術しても完治は難しい。有明医療大の福田先生の指導で柔軟と血行促進に努めるが、今後は痛みと上手に付き合うことになる。
監督は先日の全日本学生の団体戦メンバーから息子を外した。大事な大会で、腰に爆弾を抱えた力不足の選手の入れ替えは仕方ない。本人はショックだが、これを自分と向き合う機会と捉え、柔道部は後輩に経験を積ませる機会となった。
柔道では飯が食えない。
柔道家なら憧れる世界柔道大会は、全日本代表メンバーから各階級一人しか出場できない。プロアマ問わず、どのスポーツでも一握りの選手に淘汰され、外れた者は今までの鍛錬や上下関係で得た礼節を身体に刻み、新たな道を歩むのだ。
息子も分かっている。体育の教職を選び、来年は母校の安田学園で教育実習だが、体育や社会科の教員は人数も多く空きが少ない。教員資格だけでは先生になれないのが現実だ。
先日の千葉県学生大会では、腰の調子が良く優勝したが、直ぐに事態の好転はない。さすがにお気軽な息子から進路相談したいと言ってきた。
勿論、幾らでも力になるが、一番重要なのは自分はどうしたいか、何をしたいかである。
柔道家に多い警察・消防の公務員だが、今は倍率も高くかなり難関。だからといって、どこかの会社の営業でもの仕方ない発想はダメだ。事前にOBや会社を訪問し、やりたい方向を絞らないと、あとで後悔して転職グセが付くだけだ。
「学生時代を謳歌」とは無縁な柔道漬け生活をやり通した一途さは素晴らしい。しかし柔道と素直と根性だけでは、厳しい世間を乗り切れない。
この3年間、大学柔道も大会中止か無観客試合で見学できずにいたが、ここにきて「柔道息子vs就職」という柔道以外の初試合が始まる。
この真剣勝負は柔道と異なり、私は多少のアドバイスしながら観戦できる。息子には一大事だが、正直、これは見ものである。